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PROJECTS
UNDER THE MOON

普遍的存在である月に基づいた住宅である。

近年の生活様式の多様化は、住宅の根底にあった太陽から演繹される住宅の構成要素の存在を弱めつつある。そういった中、夜の自然や時間に焦点をあてた住宅が当然あっていい。月を住居に還元していくことは、特殊解ではあるが、その解は、普遍的な美意識と自然・現象から成立する。日本的静謐や陰翳を再考し、夜だからこそ得られる繊細な要素を拾って、人の生活の在り方を考えていくことが、より豊かな空間を提供できると考えている。

潮汐のある湖の畔に半ば埋まった住宅の内部は、青いグラデーションがつけられており、その表層が月光によって浮かび上がり、空や水と溶け合いながら朧げな境界をつくっている。

月の存在が視覚的に感じられずとも普遍的に存在する月の引力による潮汐は、端部のテラスの開口を潮汐により水が空間にふたをして音の状況を変えたり、あるいは、風をかたちにした波紋や光を内に導き、この住宅が月や自然と呼応していることを感じさせてくれる.

Inspiration

・・・「けれども前にも述べたように、われわれ東洋人は何でもない所に陰翳を生ぜしめて、美を創造するのである。「掻き寄せて結べば柴の庵なり解くればもとの野原になりけり」と云う古歌があるが、われわれの思索のしかたはとかくそう云う風であって、美は物体にあるのではなく、物体と物体の作り出す陰翳のあや、明暗にあると考える。夜行の珠も暗中におけば光彩を放つが、白日の下に曝せば宝石の魅力を失う如く、陰翳の作用を離れて美はない。(中略)私は、われわれが既に失いつつある陰翳の世界を、せめて文学の領域へでも呼び戻してみたい。文学という殿堂の楣を深くし、壁を暗くし、見えすぎるものを闇に押し込め、無用の室内装飾を剥ぎ取ってみたい。それも軒並みと云わない。一軒ぐらいそういう家があってもよかろう。まあどう云う工合になるか、試しに電燈を消してみることだ。」

『陰翳礼賛』 谷崎潤一郎

「月光は、水のように澄みわたり、水は月光ととけあって大空に連なる。」

趙嘏

DT Design Awards2006 グランプリ受賞作品