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PORTFOLIO
Priest’s Quarters with rooftop slit

都心近郊にある寺の庫裏の計画である。豊かな緑と適度な陰り、静寂と読経の音、線香の香り。慎ましい雰囲気の中に、本殿、客殿と並んで建つ。

参拝者の心情を察するに、そんな閑静な境内に相応しい「佇まい」を持ち、住人の生活感を露出させない建ち方が必要だと感じた。求められた機能をふまえた上で、深い軒の寄棟屋根をもつ、一部2階建てのコの字状の外観を先に決定し、その佇まいをこの建築のcodeと定めて設計を行った。

一方で、30代前半の住職夫婦が伸びやかに生活する空間もまた必要であった。ここでは寄棟形状の屋根の上からくり抜かれるよう光溢れる開放的な隙間を設けている。我々はこれを生活と佇まいをつなぐ「緩衝体」と名付けた。各居室の空間単位を、その緩衝体を間に挟みながら配置してゆく。私から公へ、プライベートな領域から動線空間を介して境内へとつながる構成を軸に、緩やかな気持ちの切り替えが出来ることを目指した。

緩衝体は大棟に開けられたスリットからトップライトを採り入れた空間である。ある面は透過する天井面を通して光を居室へと運び、ある面は吹き抜けとして光と共に風や雨などの自然を取り込む。寄棟という形状が生み出す閉じられた空間は、壁面開口やハイサイドライトなど様々な形で「緩衝体」と接続し、開かれていく。これは開放的な生活を許容するための仕掛けであるが、同時に居室間の適度な関係を保つ上でも効果的な構成となる。この緩衝体を介することで、1つの寄棟を隔たりのある2つの寄棟へと分節する。

境内で静かに佇まう外観をそのままに、住職の日常としての伸びやかな生活を許容する広がりや開放性を有するこの庫裡は、「緩衝体」を介することによって、真の意味で開かれる住宅となった。